第1回
「生きることは 歩くこと」
77歳で仕事を辞し、ちょっぴり誇らしく、40年乗った車を降りた潔い決断に自分を褒めニンマリ。しかし、仕事の緊張が切れ、足を失った意味はすぐさま生活の日常を失う大事件だった。
歩けない、買い物ができない、食べることに困った。
通販・宅配・保存食活用などあらゆる手段を使っても気持ちは落ち込むばかり、不眠に気が狂いそうになった。
あれから3年、80歳の誕生日を迎え、「歳を重ねた老人って訳じゃない」などと公言している自分がいる。
もちろんこの3年は、歩く努力の連続の日々。今では、一歩一歩でも歩けるようになり、乗り方を知らなかった市バスを自由に使いこなし、海外旅行までもできた。50年以上住んだ地域も自分の足で歩いてみると新発見ばかりで楽しい。出会いの立ち話もまたいい。
3人の子供とともに、地域生活に仕事に…と髪を振り乱した振り返ると、こんなに自由で誰にも妨害されない時間がたっぷりある今の幸せを「老い」にこじつけて享受しないのは何と勿体ないことか。
人生が急変した。「希望」という文字がキラキラ輝いて「まだお前の人生はこれからなんだ」と背を押すのは自分の心である。趣味の囲碁も碁力が落ちたなどと思わなくなった。秋田県で開かれる今年の「ねんりんぴっく」にも参加することにした。
歩けるって素晴らしい。命の一滴まで生き切る!それは歩くことだ。
■著者紹介
十文字 美恵
昭和12年山形県生まれ
川崎市宮前区菅生在住
看護師、介護支援専門員、老人保健施設生活相談員、ホームヘルパー養成講師を経て、現在80才
私の人生すべてに感謝
「医者要らず、歩けば病気が逃げていく」
毎日欠かさず歩く!事をモットーに生きている。